2026年8月12日
葬儀業界とは|仕事の種類・働き方・将来性を徹底解説

葬儀業界と聞くと、葬儀を進行するスタッフや納棺師を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、ご逝去後のお迎えから葬儀の打ち合わせ、会場設営、納棺、式の進行、葬儀後の供養まで、多くの仕事があります。営業、事務、管理、マーケティングなど、葬儀の現場に直接立たない職種もあります。
この記事では、葬儀業界の全体像、主な職種、働き方、今後の見通しを初めての方にも分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 葬儀業界が担っている仕事の全体像
- 葬祭プランナーや納棺師など、主な職種の違い
- 勤務時間や夜間対応など、葬儀業界特有の働き方
- 葬儀業界の今後と、未経験から転職する方法
葬祭キャリアサポート 葬儀業界には、接客経験、介護・医療経験、営業経験、事務経験などを生かせる仕事があります。「自分にできる仕事があるか知りたい」という段階でも、業界を知るところから始めて大丈夫です。
葬儀業界とは
葬儀業界とは、ご逝去から葬儀、火葬、供養まで、故人様とご家族のお別れを支える業界です。「エンディング業界」と呼ばれることもあります。
葬儀社が中心となり、納棺会社、生花会社、搬送会社、返礼品・料理会社、寺院や宗教者、火葬場など、さまざまな事業者が連携して一つの葬儀をつくります。

葬儀の形式は、一般葬、家族葬、一日葬、直葬・火葬式などさまざまです。地域や宗教・宗派、ご家族の希望によって、必要な準備や進め方も変わります。
葬儀業界が支える3つの段階
| 段階 | 主な仕事 |
|---|---|
| 葬儀前 | ご逝去後のお迎え、搬送、安置、葬儀の打ち合わせ、会場・火葬場・宗教者などの手配 |
| 葬儀当日 | 納棺、会場設営、受付、司会進行、ご家族や参列者の案内、出棺、火葬場への同行 |
| 葬儀後 | 法要、仏壇・位牌、納骨、返礼品、相続・遺品整理などの相談対応 |
ポイント 葬儀業界の仕事は、式当日の進行だけではありません。ご家族との最初の相談から葬儀後の手続きや供養まで、長い期間にわたって支える仕事です。
葬儀業界の主な仕事
会社によって職種名や担当範囲は異なります。同じ「葬祭プランナー」という名称でも、一名が最初から最後まで担当する会社と、打ち合わせや式の運営を分担する会社があります。
ここでは、代表的な仕事を紹介します。
葬祭プランナー
ご家族の希望を聞き、葬儀の内容を組み立て、必要な手配や当日の進行を行う仕事です。
主な業務には、葬儀の打ち合わせ、見積書の作成、式場・火葬場・宗教者の手配、会場設営、司会進行、スタッフへの指示などがあります。
「葬祭プランナー」は企業ごとに使われることが多い職種名です。一方、「葬祭ディレクター」は厚生労働省が認定する技能審査に合格した方が使用する名称です。葬儀の仕事を始めるために、最初から資格が必要というわけではありません。
生かしやすい経験:接客、営業、ホテル、ブライダル、介護、マネジメント
納棺師
故人様のお身体を整え、ご家族がお別れをするための準備を行う専門職です。
納棺師は、お着替え、化粧、整容、納棺の儀、専用の設備を使って故人様のお身体を洗い清める「湯灌」などを担当します。「湯灌師」と呼ばれる場合もありますが、別の職種ではありません。
技術だけでなく、ご家族への説明、声のかけ方、立ち居振る舞いも大切です。
生かしやすい経験:介護、看護、美容、接客、サービス業
セレモニースタッフ
通夜や葬儀が滞りなく進むように、会場準備、受付、参列者の案内、式中の誘導、片付けなどを担当します。
葬祭プランナーの補助から始め、経験を積んで打ち合わせや式の進行を担当するケースもあります。未経験者の入口になりやすい職種の一つです。
生かしやすい経験:接客、販売、飲食、ホテル、ブライダル
搬送・ドライバー
病院や介護施設、ご自宅などから故人様をお迎えし、安置場所へ搬送します。霊柩車の運転や車両管理を担当する場合もあります。
夜間や早朝の対応が発生する可能性があるため、勤務形態の確認が重要です。普通自動車運転免許を応募条件としている求人が多く見られます。
生かしやすい経験:運送、タクシー、介護送迎、接客
生花・祭壇制作
生花祭壇や供花を制作し、式場に設置する仕事です。花の知識や制作技術に加え、限られた時間内で会場を完成させる段取り力も求められます。
会社によっては、未経験から制作補助として技術を身につけられます。
生かしやすい経験:生花店、フラワーデザイン、ブライダル、会場設営
営業・事務・管理・マーケティング
葬儀業界には、葬儀の現場に直接立たない仕事もあります。
- 営業:事前相談、会員制度、法人・施設との関係づくり
- 事務:電話対応、請求書、役所への提出書類、備品・スケジュール管理
- 管理職:スタッフ育成、数値管理、業務改善、複数拠点の管理
- マーケティング:Webサイト、広告、SNS、イベント、問い合わせ分析
異業種で培った経験を生かし、葬儀業界に入ることも可能です。
転職のヒント 「葬儀業界に興味はあるけれど、故人様に直接触れる仕事にはまだ不安がある」という方もいます。まずは事務、営業、マーケティングなど、これまでの経験に近い職種から業界に関わる方法もあります。
葬儀業界の働き方
葬儀社には24時間、搬送や相談の連絡が入る可能性があります。ただし、すべての社員が常に勤務しているわけではありません。会社ごとにシフトを組み、夜間専任、宿直、自宅待機、外部の搬送会社への委託などで対応しています。
主な勤務形態
| 勤務形態 | 特徴 |
|---|---|
| 日勤中心 | 日中の打ち合わせ、式の運営、事務などを担当する |
| シフト制 | 土日祝日を含め、交代で休日を取得する |
| 宿直制 | 会社に宿泊し、夜間の電話や搬送に対応する |
| 自宅待機 | 自宅で連絡を待ち、必要な場合に出勤する |
| 夜間専任 | 夜間の電話受付や搬送を専門スタッフが担当する |
同じ職種名でも、夜間対応の有無、担当件数、分業体制などによって働き方は大きく変わります。
求人票で確認したいこと
- 夜間対応はあるか
- 宿直と自宅待機のどちらか
- 当番を月に何回程度担当するか
- 呼び出しがなかった場合も手当が支給されるか
- 翌日の勤務はどのように調整されるか
- 一名で対応するのか、複数名で対応するのか
「夜勤あり・なし」だけで判断せず、実際の運用まで確認することが大切です。
葬儀業界は未経験から働ける?
葬儀業界には、未経験者を対象とした求人があります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、葬祭スタッフとして働き始める段階では、特定の学歴や資格は必須ではないと案内されています。一般的には葬儀社で実務経験を積み、社内研修や先輩の指導を受けながら知識と技術を身につけていきます。
ただし、ご家族への接遇、宗教・宗派、葬儀の流れ、ご遺体の取り扱いなど、入社後に学ぶことは少なくありません。研修内容や教育担当者の有無は、会社選びの重要なポイントです。
異業種から生かしやすい経験
| これまでの経験 | 生かせる場面 |
|---|---|
| 接客・販売 | ご家族や参列者への案内、言葉遣い、状況に応じた対応 |
| 営業 | 希望の聞き取り、プランの説明、関係者との調整 |
| 介護・医療 | ご高齢者やご家族への配慮、衛生に関する意識 |
| ホテル・ブライダル | 式典運営、接遇、チームでの進行 |
| 事務 | 書類作成、電話対応、スケジュール・費用管理 |
| 運送・ドライバー | 搬送時の運転、時間管理、車両管理 |
未経験だから不利とは限りません 葬儀の知識は入社後に学べます。採用では、相手の話を落ち着いて聞けること、時間や約束を守れること、分からないことを素直に学べることなど、これまでの仕事で身につけた姿勢も見られます。
葬儀業界の将来性
葬儀の形は変化していますが、故人様を見送る仕事そのものがなくなるとは考えにくいでしょう。
厚生労働省の人口動態統計によると、2025年の死亡数は158万9,489人でした。また、国立社会保障・人口問題研究所は、日本の総人口に占める65歳以上の割合が、2020年の28.6%から2070年には38.7%になると推計しています。
一方で、「死亡数が多いから、どの葬儀社も安定する」と単純に考えることはできません。家族葬や一日葬、直葬・火葬式などの広がりによって、葬儀の規模や顧客のニーズは変化しています。地域による人口差や競争、価格の透明性、Webを通じた集客への対応も必要です。
今後は、葬儀を運営する力に加えて、次のような力を持つ人材の重要性が高まると考えられます。
- ご家族の希望を丁寧に聞く接遇力
- 多様な葬儀形式を提案する企画力
- 納棺や衛生処置などの専門技術
- 葬儀後の供養や終活まで支える知識
- Web、SNS、業務システムを活用する力
- 新しく入社した方を育て、働きやすい職場をつくるマネジメント力
「需要がある」と「働きやすい」は別の話です 業界全体に必要性があっても、勤務条件や教育体制は会社によって異なります。転職するときは将来性だけでなく、夜間対応、休日、担当範囲、研修、評価制度まで確認しましょう。
葬儀業界に向いている方
職種によって求められる能力は異なりますが、次のような方は経験を生かしやすいでしょう。
- 相手の話を途中で決めつけずに聞ける方
- 落ち着いて丁寧に対応できる方
- 時間や約束を守れる方
- 状況の変化に合わせて行動できる方
- チームで協力することを大切にできる方
- 知識や技術を継続して学べる方
一方で、「優しくなければならない」「死を怖いと思わない方だけが向いている」と決めつける必要はありません。最初に不安を感じるのは自然なことです。仕事内容を理解し、自分が大切にしたい働き方と合うかを考えることが重要です。
転職前の確認ポイント
葬儀業界では、会社によって仕事内容や勤務条件が大きく異なります。求人票に同じ職種名が書かれていても、担当範囲まで同じとは限りません。
応募前には、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 一名が葬儀全体を担当するのか、分業制か
- 夜間対応、宿直、自宅待機があるか
- 月間の担当件数と残業の考え方
- 入社後の研修期間と教育担当者
- 資格取得支援やキャリアアップ制度
- 給与に含まれる手当と固定残業代
- 勤務地や異動・転勤の可能性
仕事内容だけでなく、「どのような体制で働くか」まで確認することで、入社後のミスマッチを減らせます。
給与の相場については葬儀業界の給与相場|職種別の違いを徹底比較、休日・シフトの実態については葬儀業界の仕事に休みはある?シフト・夜勤の実態、未経験からの準備については未経験・異業種から葬儀業界に転職する方法|準備すべきことでも詳しく解説しています。
まとめ
葬儀業界は、ご逝去後のお迎えから葬儀、納棺、供養まで、故人様とご家族のお別れを支える業界です。
葬祭プランナー、納棺師、セレモニースタッフなどの現場職だけでなく、搬送、生花、営業、事務、管理、マーケティングなど、さまざまな仕事があります。
未経験から始められる求人もありますが、職種名だけで仕事内容を判断せず、勤務形態、担当範囲、研修制度を確認することが大切です。
よくある質問
葬儀業界で働くために資格は必要ですか?
多くの職種では、働き始める時点で必須となる資格はありません。ただし、搬送職では普通自動車運転免許を求められることが多く、職種や企業によって応募条件は異なります。葬祭ディレクター技能審査など、実務経験を積んでから取得を目指す資格もあります。
葬儀業界は未経験でも転職できますか?
未経験者を対象とした求人があります。接客、営業、介護、医療、ホテル、事務、運送など、異業種で培った経験を生かせる場合もあります。研修制度と、未経験者を受け入れた実績を確認しましょう。
葬儀社では必ず夜勤がありますか?
必ずあるとは限りません。日勤のみ、夜間専任、宿直、自宅待機、外部委託など、会社によって体制が異なります。同じ会社でも職種によって夜間対応の有無が変わるため、応募前の確認が必要です。
葬祭プランナーと納棺師の違いは何ですか?
葬祭プランナーは、主に葬儀の打ち合わせ、手配、会場準備、式の進行を担当します。納棺師は、主に故人様のお着替えや化粧、整容、納棺の儀を担当します。ただし、会社によっては一名が複数の業務を担当します。
参考資料
- 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag:葬祭ディレクター」
- 厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
